🐾14話 福、がんばったばーい!小さな勇気の一日
🐾 11/16日誌 朝の大騒ぎ ― しずくの過保護モード
朝の犬猫カンパニーは、いつも以上にざわついていた。
ソワソワ歩き回るしずくが、第一声から全力だった。

あたい、心配で寝れへんかったでっせ!
福助っち、緊張してないか気になりましたぜ!

しずく課長、とりあえず落ち着こうヨ⁉
ほら、今日の日帰り手術って、そんなに長くは——

長い短いの問題じゃありませんぜ! 心の準備いうもんがありまっせ! 心配でご飯も喉通りませんでしたぜ💦

しずく課長… 全部食べてたじゃない… おやつもしっかり…

い、いつもの半分でっせ。
詩は苦笑いしてパソコンに向き直ったが、
その手もいつもよりぎこちない。
画面には、朝のSNSの予約投稿が開いている。
投稿文は「福、今日がんばれ!」と応援するつもりが…

うわっ、『がまんばれ福』になってた💦
思わず削除ボタンを連打していた。
一方、姫は電話応対中だった。

はい、犬猫カンパニーでございます。
……本日の確認は——あっ、専務にお繋ぎい……あら、今日は……
気まずそうに受話器を見つめて、ゆるくため息。

日帰り手術ですのに、みなさん慌てすぎですわ。
そんな中、永遠は福の周りをぐるぐる回っていた。

福、大丈夫ニャ? 痛くないニャ? 怖くないニャ?
……ニャんか、いつもより静かニャ?
福は少し緊張した顔で、キャリーの中をじっと見つめていた。

あははー……きんちょうしとうけん ちょっとだけばい……
その声で、一気に空気が引き締まった。
しずくは胸に手をあてて深呼吸。

よし……! あたいが、みんなの気持ちまとめまっせ!
今日は福ちゃんの応援デーでっせ!!
詩も大きく手を挙げた。

じゃあ、詩は広報として応援チームの“掛け声担当”やるネ!
姫はふふっと笑いながら頷く。

まったく……。でも、こういう日こそチーム力が試されますわね。
永遠はそっと福のそばに座り、
小さな声でつぶやいた。

がんばるニャ。帰ってきたら……いっぱい一緒に寝るニャ。
福は、少しだけ笑った。

あははー……ありがとたい……
その瞬間、オフィス全体の緊張が少しゆるむ。
――そして、いよいよ出発の時間が近づいてきた。
🐾 福、病院へ ― 社長と専務の送り出し

いよいよ出発の時間がやってきた。
キャリーの前で、福が小さく深呼吸している。

あははー……ちょっとドキドキしとうよ……
永遠が心配そうに顔をのぞき込む。

だ、大丈夫ニャ?
帰ってきたら……いっしょに日向ぼっこするニャ!

福、帰ってきたら“がんばったで賞”の写真撮ろうネ!
しずくは、すでに目頭を押さえていた。

うぅ……!
福助っち……! 早よ、元気になって一緒に遊びまっせ……!

しずく課長、まだ行ってもいませんのよ……。
そんな中、社長と専務が福の前にしゃがんだ。
社長は福の顔をそっと見つめて、
落ち着いた声で話しかける。

福、大丈夫だよ。
先生も優しいし、すぐ終わるからね。
専務は、福の頭を静かに撫でた。

ちょっとだけ頑張って。
帰ったら、柔らかい毛布でゆっくり休みましょうね。

あははー……いってくるばい……!
キャリーの扉が閉まると、
オフィスの空気がすん、と静かになった。
永遠がぽつりとつぶやく。

……福、がんばるニャ……
詩が机に手を置いた。

よし。私たちは“留守番チーム”としてできることしよ!
イヴは眼鏡を押し上げながら頷いた。

業務はいつも通り進めます。
福さんが戻ってきても困らないように、仕事をしましょう。
姫も静かに微笑む。

ええ。帰ってくる場所を、しっかり整えておきませんとね。
そして、社長と専務を乗せた車が静かに発進した。
オフィスには、少しだけ緊張を含んだ静けさが残った。
🐾 無事終了!の報告でオフィスが爆発
昼過ぎ。
静まり返ったオフィスに、専務からチャットが届いた。
【専務】手術、無事に終わりました。麻酔からも覚めています。
その一文を見た瞬間——。

ニャっ!? よかったニャーー!!
バタンッ!
勢い余って、永遠がイスから転げ落ちた。

ちょっ……永遠くん!? 大丈夫!?
永遠は床でバタバタしながら手を振った。

大丈夫ニャ! でもよかったニャ……!
しずくは胸を押さえて大きく息をついた。

よかったでっせ……!
よかったでっせ……!
興奮してパグ走り炸裂…
詩はスマホを取り出して、
勢いよくカメラモードを開いた。

これはもう……Xに投稿するしか——

詩ちゃん、 投稿は専務のチェックしてからですわ。

あっ… そうだった… ごめんごめん💦
イヴはほっとした表情で眼鏡を直しながら、
書類の束を整えて言った。

これでようやく安心できますね。
福さんが帰ってきても、業務が滞らないよう準備を進めておきましょう。
すると、しずくが勢いよく立ち上がった。

お祝いでっせ!
あたい、特上の”ガトー・デ・サキニタベール” 買ってきまっせ♪

すごい名前のケーキですわ…

自分がたべたいだけじゃ……!
イヴはふふっと笑った。

しずく課長、まずは落ち着きましょう。
福ちゃんは帰宅後のケアが大事だから…

……そうでしたぜ。甘いもんは今日はダメでっせ… じゃあ日持ちする、”長持ちモフモフサブレ”を買ってきまっせ♪

しずく課長… 今日じゃなくても… 食べたいだけかしら(苦笑)
一方、永遠は机にしがみついたまま、涙目でつぶやいた。

ほんまによかったニャ……
帰ってきたら……いっぱいナデナデするニャ……
詩が肩をぽんと叩いた。

永遠くん… ナデナデするのは落ち着いてからネ!
オフィスにはほっとした空気が戻り、
机の上には自然と笑顔が増えていった。
みんながその安心を胸に抱きながら、
福の帰宅を静かに待っていた。
🐾 福、帰宅 ― ちょっとしんみり、そして笑い
夕方、専務から連絡が入った。
【専務】これから帰宅します。福、少し眠そうですが落ち着いています。
そのメッセージに、オフィスが一瞬だけ静まって、
次の瞬間——

帰ってくるニャ!? やっとニャ!!

よし! “おかえりなさい”の準備しよう!!

みなはん! 玄関そろって整列でっせ!! 礼儀が大事でっせ!!

しずく課長、なんか営業の接待みたいですわ(笑)
慌ただしい音が廊下に響く中、
社長と専務が、そっとキャリーを抱えて戻ってきた。
みんなが息をのみ、目を向ける。

キャリーの中の福は、
少しぼんやりした顔で、でも確かに無事に戻ってきた。
扉がゆっくり開くと——
最初に声を出したのは永遠だった。

おかえりニャ……!!
福は、か細い声で返した。

あははー……ただいま、ばーい……
ほんの少し震える声。
でもその中には、ほっとした表情がみられた
専務がそっと福を抱き寄せる。

よく頑張ったわね。
今日はもう、ゆっくり休みましょう。
しずくは涙目で鼻をすすった。

うぅ……福助っち……!
ようがんばりましたぜ……!

しずく課長、泣きすぎですわ……。
詩はスマホをそっと構えた。

専務、1枚だけ! “がんばった福”の記念撮影したい……!

福ちゃん疲れてるから、あとにしましょうね。

ハイっ……。
永遠は福のそばにちょこんと座り、
静かに寄り添う。

福、今日は…なにもせんでいいニャ…
そばにいるニャ…
福は、その言葉に小さく微笑んだ。

ありがとたい……。
なんか……ねむたか……。
そのまま、福はふにゃっとして目を閉じた。
オフィスが一気に優しくなるような空気が流れた。
そして——
姫がそっとタオル毛布を掛ける。

……おかえりなさいませ、福ちゃん。
静かで、けれど温かい帰宅の時間だった。
🐾 夜 ― 永遠、やらかす
福が帰宅して少したった夜。
オフィスは「福を刺激しないように」と、いつもより静かに動いていた。
詩が小声で言う。

みんな、今日はほんっとに静かに……!
福、まだぼんやりしてるし……

その通りでっせ。手術したてでっせ。
音出さないように気をつけまっせ。
永遠も胸に手を当てて、決意の表情。

福のために……静かにするニャ。
絶対に、音は出さないニャ……!
——その数分後。
ガッシャーーーン!!!
‥‥‥
‥‥‥
オフィス中に響く、派手な音‥‥‥

ちょおおおおっ!?!? 永遠くんーーー!!?💦
見ると永遠の足元で、
デスクのペン立てがひっくり返り、ペンが散乱していた。

あらら・・・ 永遠くん…

さっき、気をつけまっせて言ったばかりでっせ。
永遠は固まったまま、震える声で言い訳する。

ち、違うニャ……!
ちょっと……しっぽが……当たっただけニャ……!

それを“違う”とは言いませんわ。
そのとき——
ふにゃっと頭を上げた福の気配。
永遠は慌てて駆け寄る。

ご、ごめんニャ……起こしたニャ……?
福はまばたきしながら永遠を見て、
ふぅっと息を吐いた。

あははー…… とわくん…‥あいかわらず おもろかねぇ……。
びっくりしたけど…… なんか あんしんしたばい……。
永遠がぽかんとする。

あ、安心……? なんでニャ?
福は毛布に潜りながら、
やわらかく微笑んだ。

あははー ”みんながおる”ってかんじがして…
おうちに ちゃんとかえってきたきがしたとよ…
一瞬、みんなが黙った。
詩は鼻をすすりながら、

福ちゃん……かわいすぎるんやけど……
永遠は、そっと毛布の端を整えた。

……それなら、 ほんとによかったニャ…
静かな寝息が戻ると、
オフィスには“いつもの犬猫カンパニー”の空気が広がった。
永遠のやらかしは相変わらずだったけど、
それがみんなの心をほぐしてくれるのも、いつも通りだった。
🐾 小さな体で、ほんとうによく頑張ったばーい♪
福が手術から帰ってきた日の犬猫カンパニーは、
いつものにぎやかさとは少し違う、
“そっと寄り添う”空気に包まれていた。
誰かが大変なとき、
自然とみんなで支え合う——
そんな当たり前のようで、当たり前じゃない空気が流れた一日。
しずくはずっと心配して、
詩は全力で応援して、
姫は静かに見守り、
イヴは落ち着いて環境を整え、
永遠は……最後に相変わらずのやらかしで笑わせてくれた。
そして福は、
小さな体で、不安もあった中で、
ほんとうに頑張って帰ってきてくれた。
手術の日だけじゃなく、
こんなふうにチームのやさしさが自然と形になるのが、
犬猫カンパニーらしさなのかもしれない。
そんな“優しいドタバタ”があふれた一日だった。
次は——
福の抜糸までの1〜2週間を、
みんなでしっかり見守っていく番。
あともう少しだけ、
一緒にがんばっていこうね、福。
💬 専務のひとこと
今回は福の避妊手術。今まで犬猫たちの去勢・避妊手術を経験していますが、手術となるとやはり緊張します。先月末には、私自身も入院・手術をしましたが、そのときよりも緊張しました(笑)
小さな体で、どんな気持ちで頑張っているのだろう……と考えると、
早く迎えに行ってあげたくて…とても長い一日に感じました。
でも、帰ってきた福の顔は落ち着いていて、
「大丈夫だったよ」と言ってくれているようで、
胸の奥がふっと温かくなりました。
オフィスのみんなが静かに気遣ってくれたり、
そばでそっと寄り添ってくれたり、
それぞれのやさしさが自然とあふれた一日でもありました。
抜糸まではもう少しだけ時間があり、今はサークル内での生活になっていますが、
無理をさせず、安心して過ごせるように、
これからも気をつけて見守っていきますね。
そして福、
本当によく頑張ったね。 おつかれさま。
本日のドタバタ日誌はここまで。みなさんのおうちのドタバタ武勇伝も、こっそり教えてくださいね。面白ければ勝手に仲間認定します(笑)
次回↓


最後まで読んでいただき、ありがとうございました🐾
ドタバタでしたが、無事一日を終えられました。
次回もどうぞお楽しみに♪
